工房を行く~イム サエム新作展 作者直前訪問記~


2年ぶりの イムサエム新作展が 12月1日より開かれます。

出品作が ほぼ出来上がりました という知らせを受けて
秋も深まった10月下旬 愛知県豊田市の工房を訪ねました。
一ヶ月以上も前に 準備ができてしまうなんて
如何にも 律儀で誠実なイムさんらしいことと
感心してしまいます。



工房に着くと からりと晴れた秋空の下
ご夫妻が穏やかな笑顔で 出迎えて下さいます。
2階の工房に案内されると 入念に 一つ一つ作り上げたうつわが
立錐の余地なく きちんと整理されて並べられています。
個展の準備のため お邪魔したとき いつも感じることが二つあります。
一つは 個展に向けて 今回はどの種類のうつわに力を入れて 作るか、
全体をどんなうつわで構成するか、
イムさんは 前回の個展で お客様と交わした話や
何が好評だったかという傾向を克明に 覚えていて
できる限りその要望を 実現されようとすることです。
今回は 工房に入ってすぐ 目に付いた
ズラリと棚に並べられた湯呑みと汲出しです。
染付け,黄釉、刻文、色絵など 持ち前の技法すべてを駆使して
その数20種類。
前回 殆んど 湯呑み 汲出しの出品がなかったことで
きっとお客様から “次回は是非に!”と リクエストが あったのでしょう。
今までにない トンボやざくろの文様が面白く印象的です。

一方 その他に 目を転じても見ますと
15センチくらいの浅い小鉢や深小皿が多いことに気がつきます。
それもただ丸皿だけではなく
楕円であったり 長方形であったりと 実に多彩です。
これも最近のお料理の傾向から リクエストが多いのでしょう。

  

二つ目は その個展ごとに 文様や形状 或いはスキルで
新しいことに 挑戦なさろうとすることです。

今回 きわめて特徴的なのは 筆遣いと文様にあります。
もともと イムさんの 絵付けは細やかですが
それがより一層細かく その上 実に 滑らかな筆の運びです。
モチーフも果実や花が中心で うつわの表面に描いたというより
むしろ咲きほこった花を
うつわの上にフワッと置いたように見えます。
「今回は 丁寧に描いて 奥行きのある花唐草を意識したよ。」
と聞いて成るほどと思うのです。

  

また 目を凝らして 見てみると
花のかげにカワセミや小鳥達、ウサギなどが隠れるように描かれています。
茶目っ気たっぷりのイムさんの一面を 見る思いです。

こんな華やかで 楽しいうつわが我が家の食卓に現れることを 想像すると 自然に 気分が高揚してきます。
工房内には まだまだ大皿、盛り鉢、焼酎カップ、マグカップ、徳利、盃、と
目移りするような魅力が満載です
あれもこれもと 選び出していくうちに
いつの間にか120を超えるほどになってしまいました。

心のこもったこの大量の力作で
花田のギャラリーが満たされることを思うと胸が膨らんでくるのです。


■企画展名
いとおしむ時

■開催期間・場所
期間 : 2014年12月1日(水)~ 12月6日(土) ※期間中無休
場所 : 「暮らしのうつわ 花田」 2Fギャラリースペース

■出展品目
大皿、盛鉢、長角皿、輪花小鉢、豆皿、取り皿、
汲出、徳利、ぐい呑、マグカップなど 120点

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