作家 林京子さんご夫妻インタビュー


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MOAS Kids 1周年企画

子どもの世界をめぐる Let’s connect the dots

第1話・・・「食育は体の栄養、木育は心の栄養」10/19更新

第2話・・・「おもちゃは、楽しむための生活道具」10/20更新

with 東京おもちゃ美術館館長 多田千尋氏
第3話・・・「林さんのうつわに、みんなが微笑む理由」
with うつわ作家 林京子さんご夫妻

2014年より本格的に子どものうつわ作りを始めた花田の新シリーズ「MOAS Kids モアスキッズ」
1周年を迎え、さまざまな取り組みから子どもたちと接する皆さんとの対談を企画しました。
子どもをとりまく、日々の食卓、遊びの場、学びの機会・・・いろいろな話題を通して感じた
心温まるやさしい気持ち、明るく楽しい気持ち、考えたこと、未来への前向きな気持ち・・・
それら皆さんとの交流を、シリーズでお届けいたします。
一緒に会話を楽しむような気分で、お読み頂けたら幸いです。
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ご紹介

林京子さん、宏初さんご夫妻は、石川県に窯を持ち、もう20年以上うつわ作りを続ける作家です。
磁器の白い生地に染付や鉄絵でおおらかに、リズミカルに描かれた、鳥や草木など動植物の文様が人気です。ほぼ毎年行われる花田の個展では、例年行列が出来るほどの人気作者。
2015年からは、本格的な色彩豊かな下絵の具を取り入れました。
カラフルながらも、やわらかな色調は早くも新たな定番となりました。
MOAS Kidsでも人気の林さん、これからの活躍に益々期待がふくらみます。

 

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MOAS Kids 1周年企画

子どもの世界をめぐる Let’s connect the dots
第3話・・・「林さんのうつわに、みんなが微笑む理由」
with うつわ作家 林京子さんご夫妻

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子どものうつわ作りを始めて
花田: 昨年、林さんにはMOAS Kidsのためのうつわを沢山作っていただきました。子ども用としてなにか特別なものを作ってもらうというよりは、今まで作っていただいたうつわの流れにあるものだったと思います。もともとは、なまず楕円鉢がお子様向けに選ばれていたんですね。高台も広いし、離乳食にも使えるし、おかず皿にしてもいいし、って。そのうち、僕らもMOAS Kidsを始めることになって、林さんにも協力いただくことになりました。メイが誕生したのも、その時です。自動車やら、ライオンやら、キャラバンやら色々な新しい文様や、キツネの嫁入りみたいなストーリー性を持つものも生まれました。作る上では、いつもどおりの部分もあるし、子ども向けということで気を使ってくださった部分もあるかと思います。まったく違うものではないということは最初からおっしゃっていました。(以下 花田-)

林京子: 多少、高台低く広くして、倒れにくいものだとか、かたちで気を使ったのは、そのあたりかな。あと、小さい子供が持つから持ちやすい大きさにはしました。
林宏初: 絵付けは分かりやすいほうがいいな、って思っていました。幾何学なんかだと、ちょっと何かしら、っていう風にもなってしまうし。

-: 僕らは、おじいちゃま、おばあちゃまが可愛い孫に買ってあげることも考えていましたが、子どもがご飯茶碗くらいは自分で選べたらいいな、とも思っています。どうやって選んでもらうかっていうとやはり指差して名前を呼べるものじゃないといけません。「あ、じゃあ、僕、あの市松がいい」なんていう風にはなかなか言えないじゃないですか(笑)。そういう時に「ワンワンがいい」とか「ブーブがいい」とかいう風にとっつきやすいほうが入っていきやすいかな、って考えました。ヘリコプターとかウサギさんとか。自分で選ばないにしても、愛着を持ちやすいほうがいいですよね。ついこの間も、お食い初めセットをお求めくださったお客様の子が、今は2歳くらいになって、そのデザートカップを今では自分で使っているようで、見込みの絵に会いたいからって最後まで食べようとする、って聞きました。実際そういうことが起きているんだなって、とてもうれしかったです。

 

林京子: 子どもが自分で使うものを自分で選ぶっていうことは、食器屋さんに連れてきてもらって初めてできることですよね。そういう環境がもっと多くあれば、もっと大きくいろいろ変わってくるような気がします。

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お小遣いで買ったコーヒーカップ

-: MOAS Kidsを始めてからはお子様連れのお客様は随分増えました。林さんご自身が小さかったときはいかがでしたか。


林京子: 私は、小さいときから絵を描くのが好きだったし、小学生のころから益子陶芸まつりに、毎年、親に連れてってもらっていて、私は私で好きなもの見たり買ったりしていたから。

-: そういう環境もあったのですね。

林京子: 連れて行かれれば、いやがおうにも興味持つんだよね。だけど、みんながみんな、そういうことをするわけじゃないから。
林宏初: そういう機会自体も少ないだろうし、かえって興味持つ子のほうが少ないと思う。僕の場合は一般的な田舎の家庭で育って、男の子はそういうものに興味持っちゃいけない、みたいな雰囲気があった。男子厨房に入らず、みたいな。

-: おままごと的な扱いになってしまうのでしょうか?

林宏初: それもあったし、あと、子どもは与えられたもので黙って食事しろ、みたいな(笑)。とにかく残さず食えとか。男の子は花なんかにも興味を持っちゃいけない。

林京子: 男の子らしくないっていう(笑)

林宏初: 僕はそういうのに違和感を感じていてね。別に男が興味を持ったって構わないよな、ていう。あと、中学校のときに、家で豆を挽いてコーヒー飲んでいたんですが、そうすると、カップがないんだよね。最初はお湯呑か何かにいれて、クリープかなんかと一緒に飲んでいたんだけど、それがやっぱり嫌で、駅前の九谷焼やっているところに、自分のお小遣い持って、コーヒーカップ買いに行っていました。

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自分が持った好奇心
-: それは凄い。そんな中学生、いません(笑)。

林宏初: 家になかったんで、自分で使う分だけでもと思って。

-: じゃあ、ご家庭で宏初さんだけ別のカップ使っていたのですね。

林宏初: たしかね。あと、妹がいたんで妹の分と二つ、だったかな。
-: やさしい、お兄ちゃんですね。
林宏初: いや、ごめん、自分の分しか買っていなかったかな。話を美化しすぎました。
林京子: (笑)
-: いいじゃないですか、そうだったってことで。

林宏初: じゃあ、そういうことで。

-: 今みたいな話を聞くと、育った環境だけでもないんですね。人が生まれ持った資質も大きいですね。

林宏初: そうだね。僕の場合は、おかれていた環境が、逆に作用した感じです。男と女っていうのがすごく分かれていたことが、逆に僕をそうさせたのかもしれません。

-: 男の子らしさとか、女の子らしさとかっていうのが、今よりはっきり線引きされていたのでしょう。

林宏初: 女の人が食器とか食材とかっていうのは決めていて、男の人がそういうことに口を出すと、「こいつ、男の子らしくないな」みたいな感じになっていって。

林京子: 女々しいって思われちゃう(笑)。

-: 男の子は剣道やっていたり、野球やっていたり、って言うのがあるべき姿・・・。

林宏初: 僕は変わり者でした。でも、当時、変わっているって言われることに対して、よく理解できていなかった。僕自身が変わっているっていうことを自覚していなかったね。今も変わっているか(笑)。

-: 趣味の鳥についても・・・

林京子: (笑)でも、鳥の世界は、もっと凄い人たちがいっぱいいるから。

林宏初: それに、あまり変わり者風情を出すとチェックされるんで、できるだけ隠してやっていく(笑)。

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-: いずれにしても、京子さんも宏初さんもうつわには興味あったんですね。

林京子: うん、嫌いではなかった。ただ、手作りがいいとか、そういうわけでもなくて、人と違うものがよかったの。他人と一緒っていうのが、すごく嫌で。小学校入ると、ほら、みんなで、お習字の道具とか、クレヨンとか、学校で支給されるでしょ。或いは、学校で支給されるお裁縫箱はセルロイドでできていて、男子はブルーで、女の子はピンク色。強制じゃないんだけど、学校から、こういうのあるよとは言われる。面倒くさいから、みんな、それ買うのよ。うちだって、学校で買ってくれれば、一番楽だったはず。でも私「あれは絶対に嫌!」と思って。だけど、そこで買わないと、裁縫道具をどこかで探さないといけない。あっちこっちのデパート行ってね。それでも「あれはいやだ」「これはいやだ」って言い張って。親も嫌がっていたわ(笑)「なんでそんなこと言うんだろう、裁縫道具を使うその時だけの話なのに」って呆れていた。

 

-: でもお母様、林さんのそういう気持ちに付き合ってくれたんですね。僕、小さい子は普通、仲間はずれを嫌がるものなのかと思っていました。

林京子: そうよ、普通は。私は反対だった。なんで、みんなと同じものを持たなきゃいけないんだって。絶対嫌だって思っていた。

-: 小さい子達は他の子達と一緒であることで安心をしますよね。僕はどっちかといえば、親には友達と同じものを買ってくれって言っていたと思う。

林京子: わたしはそういうことに鈍感だったんだと思う。おばあちゃんがどこか行くたびに、必ずお守りを買ってくるのね、そのお守りをランドセルに束のようにつけて、ジャラジャラいわせながら学校行っていた。「よくそんなことして恥ずかしくないわね」って親が驚いていたくらい(笑)。

-: 普通はいやですよね、そういうの、恥ずかしいって。

林京子: 一つも、なんとも思わなかった。
林宏初: 多分ね、そういうことについてなんか言ってきた子はいたはずなんだよね「京子、それ変だよ」って。
林京子: うん、そうだと思うよ。でも全然、耳に入ってこないの。

 

-: それも才能です。だからこその今のものづくり。今でも脈々とそのスタンスは保たれています。

林宏初: そうだね、そのあたりは僕らが共通して持っている部分かな。ある部分はかなり鈍いですよ(笑)。まあ、子どものためのもの作るんだったら、あまりピリピリしていないほうがいいのかなとも思うよね。

-: 作者自身が「わたしはこれが好きなの」って思って作ってくれているほうが「こういうのが受けるかな」って考えられて作られているより、思い入れを込めやすいとも思います。

 

林宏初: 年齢的には僕らは60だったり、60手前だったりするんだけど、鳥、見に行った時の京子の後姿なんかみていると、まさに子どもですよ(笑)。小学生が遠足行ったときにはしゃいでいるような感じ。

林京子: みんなそうだよ、鳥を見に行っている人たちは。私だけじゃないわ(笑)。

林宏初: こどもに戻れるんだよね、鳥を見に行くと。向かう途中の船の上なんて、みんな「早くつかないかな」ってソワソワしちゃって。

-: まさに遠足ですね。

林宏初: 船も大揺れして、凄く大変な思いして、島に着くことも多い。普通考えたら、二度と行きたくないって思うのに、また来ちゃう。けろっとした顔してね(笑)。
林宏初: 僕らの毎日も、ああいうことがあるのとないのじゃ、大きく違うのかなって思うんですよね。

 

-:  子どもにはそういうピュアな部分が多くありますし、僕らなんかだと、モノを見るときも観念から入ってしまうことも多いです。でも、子どもは全くそういうことを 経ずにモノを好きになったり、選んだり、愛着を持ちます。そういう人たちの心を打つためには、作っている人たちにもそういうものがないといけないと思うし、計 算してこうすれば受けるだろう、っていうのには限界がありますよね。林さんにそういう部分があるからこそ、子どもが「メイのお皿!」って言って名指しするようなモ ノが出来上がるわけです。あんなに男の子も女の子もペンギン好きだったんだな、って思いました。またあの絵 が、可愛いんですよ。そして「同じ模様でも、手作りで一つひとつ違うから選んでね」って言うと、子どもは一生懸命選んでくれます。一生懸命、物知り顔で選んでく れているのを見ていると、何かに目覚めている瞬間だなって思います。選ぶことも楽しんでくれていることが伝わってきます。

林宏初: 割と最近、ペンギンとかイルカとか、動物をテーマにしたBBCやNHKの番組なんかも多いし、好きな子どもも増えているんじゃないかな。ペンギンも数が随分減ってきているし。結構画像で見ていて、親しみやすいんじゃなと思います。

-: ふくろう、実際は大きいし、怖いですよね。林さんのふくろうに見慣れていると、そのことを忘れてしまう。林さんは可愛く描いてくれるから、実物見るとびっくりするよね。

林宏初: 可愛いふくろうもいるんだけどね。アオバヅク、コノハヅク、キンメフクロウ・・・
林京子: 可愛い、可愛くないも個人差あるからね。鳥を好きな人はどんな鳥見ても「あ!可愛い」とかってはしゃいで写真撮ってる。

 

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ある日、オオルリとの出会い
-: 鳥は、なにがきっかけだったんですか?
林宏初: それはね、突然来たんだよ。ほら、あそこのロクロの前の窓の先に雑木林があるでしょう。ふと顔を上げたら、青い鳥がチョロチョロしていたんだ。背中が青い鳥がね。で、京子を「青い鳥いるぞー」って呼んで。そうしたら、京子が外から雑木林に回りこんで「わー、きれいだねえ」なんて言いながら、なんていう名前か調べてね。その日早速、昼休みに鳥の図鑑買いにいってね。オオルリっていう鳥だっていうことが分かった。渡り鳥なんだよね。

林京子: 結構、今くらいの時期にも飛んでくるの。
林宏初: 春と秋に二回チャンスがあるんだ。
林京子: ここがちょうど通り道みたいなのよ。

 

-: そのオオルリは林さんたちに大きなギフトを運んできてくれたんですね。鳥を見る楽しみ、という。

林宏初: ひょっとしたら、これ写真なんか撮れるぞ、とか思って。それで仕事で東京行ったときに新橋の駅前のカメラ屋さん行って、ペンタックスだったかな。初めて鳥を撮ることのできるカメラを手に入れてね。で、実はうちの犬見てくれていた獣医さんが鳥に詳しかったので、撮った写真を見せに行ったんだよ。褒め上手でねえ。「これはいい写真だ」とか言われて、すっかり有頂天。
林京子: そう、そうしたら、実はその人、日本野鳥の会石川支部の会長でね。「是非野鳥の会に」って勧誘され始めちゃって。
林宏初: いやあ、これは弱ったと。そういう会に参加するのそんなに好きなほうじゃないし。

-: でしょうね(笑)

林宏初: まあ、それでも京子は入ったんだ。いろいろ教えてもらえるしね。

林京子: そうそう。
林宏初: でも、会うたびに「奥さん入ったけど、林さんは入らないの」って聞かれるんだよ。1年間逃げ回っていたんだけど、結局どうにもならなくなって。

 

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-: なんか宏初さんらしくて微笑ましいです。鳥とうつわ作りに共通する部分、ありますか。

林宏初: 似ています。
林京子: 好きでやっている。好きだから夢中になれる、って言う部分は一緒。
林宏初: 見たことない鳥を見たいっていうのが強いんだけど、うつわも新作を作るときにそういうものを同じように感じる。
林京子: 同じことをずっとやるっていうのは、私たち、苦痛に感じてしまうの。

-: 鳥も一緒ですね。今まで見たことない鳥。

林京子: それと、やっぱり希少価値なんだよね、両方とも。

林宏初: 今しか見られない。いつでも見られるんだったら、ここまでにならないよね。瞬間の出会いに対するドキドキハラハラがなんとも言えない。いつどこかへ行ってしまうかもしれないから、情報もらうと、その場所へ一秒でも早く行きたい。鳥にいつまでいますか、なんて聞いても教えてくれないしね。

 

-: 予測できない部分や、いつまで経っても掴みきれない部分。図面を見ながらモノ作ることと違う、手作りの部分にも感じる魅力でしょうね。人間が自分の手で作る、予測できない部分です。

林京子 ひとつづつ違うっていうのがね。二つと同じものはないわけでしょう。子どもも同じデザインを同じように作られたもの、目の前に並べられたって、選ぶ楽しみはない。一個づつ違うから選べるのよ。そこらへんが面白いんじゃないかしら。

-: それにしても、こんなに鳥の文様のバリエーションを持つ作者は世界中どこ探しても、まずいないでしょうね。ふくろうにもあんなに種類がいること、林さんのうつわから学びましたよ(笑)。アイデアは尽きないですね。どんどん出てきますか?

林京子: 意識すらしてないと思う。前と同じじゃ、つまらないかなって違うのを描くくらい。アイデアが出るとか出ないとかっていう、感覚はあまりないの。
林宏初: あまり計算するタイプは向かないと思う。その時のノリで突っ走れるほうが、いいような気がする。

-: そうやって出来ちゃうんですね、自然に。だからこその、このナチュラルで柔らかい雰囲気。鳥の写真を後から見て参考にすることはあるのですか。

 

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林宏初: それはあるね。僕らは大体、気に入ったものはプリントアウトするから。気に入ったものだけだけどね。ただそれは、うつわ作りのためってわけじゃなくて・・・アルバム見ながら眠りにつくため。いいでしょう(笑)?あとね、鳥を見ていると、生きるということも含めて、命について考えさせられる。目の前で、子どもの鳥がさらわれていったり、襲われたり、鳥が鳥を食べたりするわけでしょ。小鳥をね「きたきたー」って見守っていると、チュウヒがきて、ゆりかもめなんかを襲うわけ。凄い声だして、鳴くんですよ。生きたいっていう本能から出る声です。運悪ければつかまってどこかに持っていかれるし、運が少しよければ、血だらけになりながらどこかへ飛んで逃げていく。さっきまで生きていたものが目の前で、誰かのえさになる。人間は一応そういうことはないんだけども、生きている者として、そういうこととはたまには向き合ってもいいんじゃないかなって思います。あまり保護された状態っていうのは良くないんじゃないかな、とも思っていて。今日一日なにが起きてもおかしくない、どこかに鳥を見に行って船が沈没しちゃってもしようがないんじゃないかなって。そういうこと気にするより、生きている今の時間をどう大事にするかってほうを見ていたいなって。鳥を見て、単純だけど、色々なこと考えさせられるわけ。人間はお金出せばコンビニでなんでも買えるけど、自然界はそういうわけにはいかない。

 

-: 捕るほうだって必死なわけです。お二人とも、小さいころから生き物には興味を持っていたのですか。

林京子: 私も好きだったけど、学問としてではなく、なんとなく好きでね。でも、大学で生物の研究していたような人に「なんで好きなんですか?」なんて聞かれても「なんとなく」としか答えられないし、「この鳥はなんですか?」って聞かれても答えられないのよ。

 

-: 林さんご夫妻ののうつわ作りにも共通していますね。僕が「林さんのうつわ作りで大切にしていることはなんですか」なんて聞いても、そんなもの、林さんたちにとってはあまり意味のあることではない。鳥ともうつわとも、付き合い方は一緒なのですね。

林宏初: それに、あまり仕事、仕事っていう雰囲気が出てきてしまうと、つまらなくなってきちゃうし。例えば映画俳優には「仕事だからこの映画に出演しました」なんて言われるより「この役に惚れ込みました」って言っておいてもらいたいじゃない。
林京子: 色々なスタイルがあるしね。きっちりした仕事もあるし、私たちみたいな仕事もあるし、色々あるから楽しいのよね。そういうものなのよ、多分。そして私たちの仕事が子どものうつわに合っていることを願っています。

-: 確かに、あのどんぐりがきれいに整列していたら、それはちょっと困ります(笑)。絵付けでも書き忘れなんかあると、それを選ばれる方、意外と多いですよ。さっきの希少性とか即興性ってやつじゃないでしょうか。わざとでなくて、ついつい忘れちゃったっていう、あの感じがいいのでしょう。

林宏初: 自然界には同じものがあるわけないから。違うことが当たり前だから。なんでも一緒、っていうほうが逆に無理がある。

 

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-: 二人のオンリーワン・ライフ。いいですね。で、オンリーワンて、別に目立っていたり、独創性が強くなくちゃいけないなんてことはないと思います。鳥を見ることと、うつわ作りが生活の中にうまく同居しているんですね。林さんたちには、オン/オフとか、仕事/プライベートとかいう概念は全くなくて、すべてがつながっていて、色分けすらされていないのですね。

林京子: もういまさら社会には出て行けません(笑)。

 

-: 林さんのうつわを見た人がみんな微笑む理由、少し分かった気がします。まさに、幸せのうつわです。

林京子: そうだといいわ。そして、わたしたちのうつわが、使ってくれる子どもたちの食事の時間を少しでも楽しくするものであること願っています。

 

-: 今日は、いろいろなお話を聞くことができました。有難うございました。

林京子: 有難うございました。
林宏初: MOAS Kidsの第二回展示会、楽しみにしていますよ。

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インタビューの後半、ポツポツと雨が降り始めました。
意外にも雨足は強くなり、本降りのような状態に・・・。
実はこの後、近くの浜辺まで足をのばし、林さんのお散歩コースを歩く予定だったのです。
「せっかく案内しようと思っていたのに残念でした。」と林さん。
「また次回の楽しみにします。」と工房を後にしました。
本当はやっぱり残念でしたが、山栗やどんぐりのお土産を頂いて「わざわざ拾って下さったんだ…」
と、林さんの優しい気持ちに、心あたたまる帰り道となりました。



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