直前訪問記(西納三枝、吉岡将弐)


10月企画展 直前訪問記
正統・染付を観る
――西納三枝・吉岡将弐――

現代的な創作文様 洒落たヨーロッパ文様の
うつわが好まれる風潮にあって
 染付を天職と捉え長い修業に励んで
伝統的な技や精神を磨き上げ制作に打ち込む作家は
貴重な存在となりつつあります。
10月の企画展は そうした職人肌の仕事にスポットを当て
花田でも 突出した筆力の持ち主
西納 三枝、吉岡 将弐
の染付展を計画いたしました。


うつわ

石川県 加賀平野の田園が広がる一角に西納 三枝さんの工房はあります。
昔から 九谷焼を作っていた工場の跡を借りての仕事場で
ひとりで使うにはガランとした 大き目のものです。
染付、色絵に関して名声を 誇る 正木春蔵氏の傍らで
雌伏20年 くる日もくる日も
祥瑞手を中心とした絵付けの研鑽を積んできました。
祥瑞手は中国明・清代の景徳鎮窯のひとつで細やかな線描きを重ねながら
うつわの文様を構成していく為 精緻な筆運びが鍛えられます。
見本場に入ると 展覧会に向けて準備された様ざまなうつわが
所狭しと並べられています。
和洋に使いこなせる6寸の深皿 お洒落な小鉢 現代感覚の手つき鉢 等など
伝統的な中にも 今様の生活様式を意識した魅力で目移りします。


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独立して7年・・・、
正木氏の指導で培ってきた技量を土台に
自分なりの作りたいもの 作るべきものがはっきりしてきた
と明るく語ります。
今回の展覧会では 華やかな宴で 家族のお祝い事や記念すべき食卓で
主役を果たせるうつわを意識したと言います。

これ見よがしに技を披瀝する訳でもなく
何気無い中に 確かな存在感のあるうつわ。
西納さんの人柄そのままに外柔内剛な作風に 期待が膨らみます。

一方 吉岡 将弐さんの工房は金沢市郊外
田畑がちらほら残る住宅街の中にあります。
2階が住居、1階が仕事場になっていて職住同居ということになります。
吉岡さんは 九谷焼技術研修所を卒業後
20歳で妙泉陶房に入り4年間、
その後 九谷青窯で6年間の修業の時を送ります。

妙泉陶房は 皇室のうつわに 専門に関わっている工房です。
皇室のうつわという事になると品位を保つと同時に
有職故実に基づいて様ざまな制約をうけた物作りが要求されます。
寸分違わぬ 緻密極まりない筆遣いを叩き込まれたのも頷ける話です。

他方 九谷青窯は日常のうつわの分野にあって 時代を牽引してきた工房です。
使いやすさを最優先にした「美」を求めていく姿勢は
妙泉陶房のそれとは 異にするものです。
古伊万里など伝統的な形に学びながらも
時代が望んでいる親しみ易いうつわを次から次へと作り出してきました。

両極にある ふたつの陶房を体験しながら
もともと画才に恵まれていた吉岡さんですが両者の利点を
自身の中で 程よく融合させ吉岡ワールドをつくってきました。


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私は この展覧会にあたって 古伊万里の中でも 特に繊細な花唐草を
あしらった可愛い平鉢をモデルとして提示しました。
あまりにも細やかな花唐草に 流石に てこずったと言います。
でも たまたま工房にやってきた 妙泉陶房時代の同僚がその平鉢の試作を見て
「妙泉時代より 細かい文様を描いているよ!」
と 驚いてくれたことに 誇らしいものを感じたそうです。

妙泉陶房で会得した 正統な精神と技、
九谷青窯で学んだ 日常食器のバリエーション豊かな心と形、
この得難い修業体験に 吉岡さん持ち前の才能が加わった仕事ぶりが
ますます 注目されるのです。




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企画展名:正統・染付を観る -西納三枝・吉岡将弐-
開催期間:2015年10月7日(水)~10月17日(土)
開催場所:花田ギャラリースペース(2F)

作者の西納三枝さんは10月7日(水)に在廊予定です。

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