小寺暁洋さん 作者インタビュー2026

職人への憧れから

花田:小寺さんがガラスの仕事をするまでの経緯を教えていただけますか。(以下花田-)

小寺:子どものころから、伝統工芸士や宮大工さんを特集しているテレビ番組をよく見ていました。
はっきりと作りたいものがあったわけではありませんでしたが、漠然と「職人」への憧れがあり、黙々と作業できる仕事がいいなと感じていました。

-:小さいころから興味があったのですね。

小寺:小学校の時「交通安全」みたいな、ポスターコンクールも好きでした。
絶対はみ出してはならないと塗り分けにこだわる、かたい作風で(笑)。
レタリングや文字の構成など細かいところにもこだわっていました。
で、高校も工業高校のデザイン科に進学しました。

小寺暁洋さん作者インタビュー2026

ガラスとの出会い

-:高校生活はいかがでしたか。

小寺:楽しい学校でした。剣道部にも入っていましたが、部活で疲れて課題を中途半端に出し、よく叱られていました。
担任も厳しい人で、1級建築士の資格を持つバリバリの40代女性。
デザインにも容赦なく「考え直し!」とビシビシ指摘してくるんです。
泣く生徒もいましたが、学生時代に甘やかされて、社会に出てからぶちのめされるよりはいいと思いました。
「最初に厳しく教えてくれる」というのは、優しい先生だったんだと思います。

小寺暁洋さん作者インタビュー2026

-:高校ではガラスと関わらなかったのですか。

小寺:修学旅行の北海道小樽で、吹きガラスの工房を見ました。
「溶けているガラス、綺麗すぎる」と。作業もスピーディ。
今、実感していますが、吹きガラスって時間との勝負ですよね。陶芸のロクロも見るの好きでしたが、理屈なしの感動が一番大きかったのがガラスでした。
その時に、子どもの頃、近所のステンドガラス作家さんのところで感じた「ガラス、きれいだな」という感覚がよみがえってきたんです。
ガラスって・・・、きれいなんですよ。
小さいころにインプットされた記憶って、思いがけず蘇ってくるものなのですね。

小寺暁洋さん作者インタビュー2026

ガラスでいこう

-:それで進路先が決まったのですね。

小寺:関西の一般大学の芸術文芸学部芸術学科です。
色々な素材を経験させてくれる学校でしたが、ガラスが一番難しかったです。
ガラスは、うまくいかないと、美しい、美しくない以前に、形にすらなりません。
僕よりうまい人もたくさんいて、それも悔しかったです。
そして、2年生の時ですが、講師のガラス作家の先生の工房に、頑張っている生徒は連れて行ってもらえるんです。
そこで初めて泡一つない透明なガラスを吹かせてもらって感激しました。
それも自信につながり「一旦ガラスでいこう」と絞りました。延々と色々な可能性を調べていてもキリがないので。

小寺暁洋さん作者インタビュー2026

ガラスへの理解度

-:大学卒業後はどうされたのですか?

小寺:富山ガラス工房に入りました。
入った瞬間から「あなたはガラス作家です」という空気で、怖さもありましたがスイッチが入りました。
入って1ヶ月後に新人作品展があるので、嫌でも頑張らざるを得ず、半ば強制的にうまくなれます。

-:すべての人がそういう風にとらえられるわけでもないと思います。

小寺:僕は運良く向いていたようで、なんとかなりました。
自分の作品以外に、記念品100個、といった仕事も入ってきます。
得意でないものも作らねばならず、それがガラスへの理解力を自然と高めてくれました。

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-:ガラスへの理解度とはどういったものなのでしょうか。

小寺:こう触ったらガラスはこう動く、一回転がしたらこれくらいの硬さになる、下向けたら何秒で落ちる……といったことを、理屈ではなく体で理解するということです。
昔できなかったことが、久々にやるとうまくいくこともありました。

-:気づかないうちに上手くなっていたのですね。

小寺:当時は「ガラスと仲良くなる」という言い方をしていました。
無理なく言うことを聞かせられないと、ガラスをガリガリやって傷が入ったり道具が摩耗したりします。
物理の力を使い、なるべく触らず綺麗なラインを作っていくことが大切です。

-:富山で、随分ガラスと仲良くなれたのではないでしょうか。

小寺:はい、そう思います。また、富山にはガラス作家さんがたくさんいるので、色々話せます。
ガラス作家さん、技法を隠しません。
隠しても隠さなくても、できないものはできないし、できるものはできる。
それをどう組み合わせるかを問われるので、皆さん技法を惜しみなく教えてくれます。

古来伝わる技法、その確かさ

-:その後、個人での活動を開始されました。当初から、作風は変わりませんか。

小寺:最初の頃は他との差別化に気を取られすぎて、消耗していました。
ある時、大学時代の先生に「モチベーションが維持できる、自分が心から作りたい作品じゃないともたないよ」と言われ、迷いがなくなり、シンプルなものに落ち着いてきました。
技法も紀元前からの基本的な吹きガラスの技法しか使っていません。

-:吹きガラス、およそ2000年、技法は変わらず、ですものね。

小寺:古代からある作り方には、わかりやすく正解があるというか、迷いなく作業に集中できます。
一点完成するごとの心残りがありません。

小寺暁洋さん作者インタビュー2026

適当に使っていたい

-:ガラスの仕事をする上で目標にされていることはありますか。

小寺:かたちとしては、流行り廃りのない、昔からあるシンプルなものです。
で、その上で、僕、適当に使いたいんです、ガラス・・・。

-:適当に使う・・・。

小寺:はい。工房や学校には、先生がお手本で作った、統一感のないグラスがいっぱいあります。
そこから無造作に選んで、作業中の水分補給に使う雰囲気が好きなんです。

-:これから取り組んでいきたいことを教えてください。

小寺: 古いガラスが好きで、今はあまり作られていない形にもひかれます。
そういった昔のかたちも自分なりに解釈して、現代の暮らしに合うものに作っていきたいです。
泡を入れる仕事や照明器具も考えています。
照明器具はまず電気工作の勉強からですね。

-:新たな展開、楽しみにしています。有難うございました。

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