工房を行く~内村 七生 豊かな才能が拓く 夢のうつわ~



内村 七生さんの恵まれた画才に気付かされたのは
2年半前の2012年7月に開催された
九谷青窯展でのことでした。

翌年の3月には 九谷青窯を離れることを決めていた 内村さんにとって
それは 最後の展示会となるものでした。
出展するメンバー5人のひとりとして
事前に私に試作品を見せてくれていた時のことです。

殆んどが白磁に白泥釉を掛けた真っ白なうつわ群の中に
一点だけロバと花束をあしらった色絵のお皿があったのです。

内村さんの3年間の修業時代
私が目にしていたのは白磁系のうつわばかりでしたので
その色絵の皿には驚かされました。
もっと驚いたのは描かれたロバの躍動的なこと可愛らしいこと
それにうつわから何とも言えぬ
ほんのりとした温もりが醸し出されていたのです。

こんな非凡な才能が隠されていたんだ。

そのことに気付かされた私はたたみ掛ける様に
ロバに留まらず他の動物や鳥、花や果実などを あしらった
夢が膨らむようなうつわを
展示会に向けて試作してはどうかと課題を出したのです。

約ひと月の時を経て目の前に提出された試作のうつわを見て
私はもう一度驚かされることになります。

  

ピンクのフラミンゴが立ち並んでおどけた姿で横切っていく六角の長角皿、
樹木や草花、アヒルで森をイメージし
森のあるじ2羽のフクロウが 穏やかな眼差しで見守っている8寸皿
帽子をかぶった幸福のシンボル豚の姿が描かれたマグカップなどなど
微笑ましくて 斬新なことこの上なしの試作品ばかりだったのです。

内村さんが九谷青窯を離れて2年の時が流れた今年4月頃
愛知県瀬戸市にやっと工房を構えることができたという知らせが届きました。
3年前の展示会を最後にやり取りが途絶えていたのです。

天性の画才を生かした今までの花田にはない
夢のある新領域が拓かれていくことを期待していた私にとっては
この知らせは殊のほか嬉しいものでした。

早速 今年12月8日から年末まで約20日間開かれる
“クリスマス お正月の宴を彩るうつわ”の展示会に出展を依頼したのです。

そしてこの10月中旬 、12月の展示会の試作品が出来たとの
知らせを受けて取るものも取り敢えず瀬戸へと 車を走らせました。

一軒家を借り切った工房は、瀬戸市の中心部からやや離れたところにありました。
仕事部屋に案内されるとそこには出来立てホヤホヤの
カラフルで個性豊かなうつわが所狭しと並べられています。

達者に描かれたリスや子豚 尾長鳥やアヒル また花や果物が
うつわの中で表情豊かに楽しさを競い合っています。

一転目を上に向けると壁には絵付けを前にしての試し描きであろうと
思われる熊や犬、鳥たちのスケッチが張り付けられています。
それがまた実に伸びやかで柔らかな筆致なのです。

   

彼女の才能が充満しているこの部屋は
正に内村メルヘンワールドの様相を呈しています。

たっぷりと2時間ほどかけて試作品ひとつひとつを
あれやこれやと検討していきます。

それは内村さんが表わした詩情豊かな動物や植物が
果たしてうつわの中で 思い通りに
生かされているだろうか。
うつわの文様としての新鮮感覚が印象づけされるだろうか
というものです。
それはより質の高い次元へと結実していく過程でもあります。

間もなく内村さんによって生み出された新感覚のうつわが
花田の店頭を飾りそしてお客様の食卓を彩ります。

クリスマスからお正月に掛けて
笑顔に囲まれた 様ざまな集いの中で
内村さんのうつわはきっと今までにない魅力を放つことでしょう。


■企画展名
CLIMAX SEASON

■開催期間・場所
期間 : 2014年12月8日(月)~ 12月30日(火) ※期間中無休
場所 : 「暮らしのうつわ 花田」 2Fギャラリースペース

■参加作家
正木春蔵、池島直人、岸野寛、西納三枝、海野裕、須谷窯、岡本修
山本恭代、中山孝志、季更器窯、浦陽子、内村七生(新人)

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