森知恵子さん 作者インタビュー2024


溶けているガラス

花田:森さんは現在の仕事にどのように至ったのですか。(以下花田-)

森:グラフィックデザインをやっていた7歳上の姉の影響が大きいです。
小学校の時に、当時大学生だった姉の取り組んでいる課題を見たり、話を聞いたり・・・。
さらに、父は建築関係の仕事、母は趣味のステンドグラスを自分で販売していたこともあって、自然な流れで美術短大の生活デザインコースに入りました。
そこでは金属中心の制作で「いつかアクセサリーデザイナーにでもなりたいな」と思っていました。

-:ガラスとの出会いはまだ先のようですね。

森:学校の図書館で「溶けているガラス」をテーマにした写真集をたまたま見つけたのがきっかけです。
その後ずっと「いつか実際に見てみたいな」と思っていたところ、ガラス体験の機会があったので、参加しました。
ちょっと触っただけだったのに、それではまってしまいました。
その後は、そこの工房の講座生になって、週一で毎回1時間半かけて通っていました。

-:はまり方が極端ですね(笑)。

森知恵子さん作者インタビュー2024

森:そうこうしている内に、千葉のガラス工房でのワークショップに参加する機会がありました。
それまでは一人で知らないところへ行ったり、何かをしたりって苦手だったのに、そこには「一人で行こう」と思えたのです。

-:よほど、ガラスに魅かれていたのですね。

森:まあ、付き合ってくれる友達が誰もいなかった、というのもあります(笑)。

-:ワークショップは、いい刺激になったのではないですか。

森:はい。ただ、そこでは、参加者は美術大学やガラスの学校に通っているのが当たり前で、私みたいに「週一」なんていません。
それが転換期になって「ガラスを本気でやりたい」と考え始め、富山のガラス研究所に行くことにしました。

森知恵子さん作者インタビュー2024

私にとって大切なこと

-:そこから本格的にガラスに取り組んでいかれるわけですが、森さんにとってガラスの魅力とは何ですか。

森:キラキラしている。それだけです。
私にとっては、そういうことこそ大切なんです。

森知恵子さん作者インタビュー2024

-:さらに、吹きガラスの魅力を言葉で表すことはできますか。

森:いっぱいありますが、まずは、その動きで「作業しながらの調整や修正」ができるし、その答えも出てきやすい。
何より、吹いていると「無になる瞬間」というかスポーツをやっているような感覚になります。
研究所でガラス制作を一通りやらせて頂きましたが、自分の性分に一番合っていたのも、「自分の好きなもの」ができあがるのも、吹きガラスでした。

自分だけのもの

-:最初から現在のような作風だったのですか。

森:シンプルなつくりは変わっていないです。
特にこの「白雨(はくう)」というシリーズは、学生の頃からずっと作っています。

-:森さんのガラスはシンプルだけど、制作者の感性をわずかに感じさせるバランスが素晴らしいです。

森:シンプルにそぎ落とし過ぎると、私がそこになくなってしまう気がします。
本当はそうではないのかもしれませんが。
自分がそこにいる「理由」・・・というか「ひとくせ」のようなものを加えたいなと思っています。

森知恵子さん作者インタビュー2024

-:森さんの仰る「ひとくせ」に僕は魅かれているのだと思います。

森:やはり「何か」をしたい・・・。
その何かをすることで、自分の中にあるものが伝わっていけばいいなと。

-:なんなのでしょうね。
無くなって困るものではないけれど、あればハッピーになれるもの・・・。
使う側から見ると、何なのでしょうか。

森:「自分だけのもの」になっているのかな・・・。
同じものを作っていても、それぞれ違いますし、その中から選んでいただけるわけです。
またその「何か」を加えるときは、そのものだけについて考えているので、それぞれの思いは個別です。
私自身も他の作家さんの作品を「『私にとっては』この子がかわいいの」って選ぶのが好きです。
そして、それを使うのが、それぞれの「幸せな時間」になってほしい、そう願っています。

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「線」が好き

-:森さんが、うつわを作る時に大切にしていることを教えていただけますか。

森:彼(森康一朗さん)とは正反対になりますが、「感覚」を大切にしています。

-:いいですね。同じ場にいながら、正反対と思うものを大切にできる。

森:自分で「これはいらない」「これはだめ」と思うことはやりません。
例えば、真ん中は嫌なんです。

-:真ん中?

森:ガラスにカットを入れるときも、真ん中にはしません。

-:確かに、少しずれていて、非対称。幅も微妙に違います。
色々なパターンを試されるのですか。

森:その時持ったイメージ通りに、自分が気持ちよく感じるバランスを探りながら、その時その時の自分の感覚を切り取って、それをガラスに置き換えていきます。
とりあえず「線」が好きなんです。

-:線!

森:線は影がきれいです。
水を注いだ時に、ずれて見えたり、波打っているように見えたりするのも好きです。

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自然の風景をガラスに

-:これは何から出てきたのですか。

森知恵子さん作者インタビュー2024

森:光がパッと瞬く様子をイメージしています。
江戸切子のカットと同じやり方で、一本ずつ引いていきます。
一本一本の線だけでなく、かたまりでも見てほしいので、それぞれの線はもちろん、その間も大事にしています。

-:線と線の、間の取り方ですか。

森:間が空きすぎると却ってうるさくなってしまいます。
料理を盛りつけた時に、この線の片側だけ見えてくるのも好きです。

-:そうそう、盛り付けると尚更魅力的なんです。
凸凹させているのも好きです。

森:凸凹の範囲は決めています。
また、模様として見えないように心がけています。
模様が無いものと同等の雰囲気になってくれたらいいなって。

-:森さんのうつわには全てタイトルがついています。

森:はい。
表現したいものがあって、それから作り始めるのですが、元々私が持っていたイメージを少しでも伝えたいなと思っています。
「瞬き(またたき)」もフラッシュ・・・。
「白雨はくう」は夕立という意味ですが、イメージとしては雨がつたう雫、「雪晴(ゆきばれ)」は雪がやんで、積もった場所に光が当たった感じです。
自然の風景をイメージすることが多いです。

森知恵子さん作者インタビュー2024

愛用のキャニスター

-:展示会、宜しくお願いします。

森:こちらこそよろしくお願いいたします。
我が家でも普段から重宝しているキャニスターを作りたいなと思っています。

森知恵子さん作者インタビュー2024

-:キャニスターは既に作られていませんか。

森:もっとシンプルなつくりのものを考えていて、家ではジャムや塩こうじを入れています。

-:見た目もキレイでしょうね。

森:中身を出し入れしやすく、洗いやすい大きさの口や蓋を意識しています。

-:楽しみにしています!

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