三浦侑子さん 作者インタビュー2024


吹きガラスとの出会い

花田:三浦さんは、どのようにしてガラスのうつわ作りと出会ったのですか。(以下花田-)

三浦:大学では空間デザイン学科に通っていましたが、物を作っている感覚をより直接感じられることをしてみたくなりました。
その大学には陶芸や木工はありましたが「どうせならそこに無い素材にしよう」と思っている時に、たまたま見たのが吹きガラスの番組でした。

三浦侑子さん作者インタビュー2024

-:三浦さんの才能とガラスがつながった瞬間ですね。

三浦:「作っている感」を思いっきり感じました。
「何だかよく分からないけど、この人たちすごく作っているな。みんな汗だくだし」と。
たまたま同級生にもガラスに興味を持っている子が一人いたんです。
それで一緒に色々動き出しました。早々にベネツィアまで行って。

-:行動が早いですね。

三浦:お金はないですけど、時間は沢山ありましたから。
どうせなら本場を見たいですし、その先そんな機会もないでしょうし。

-:ベネツィア、いかがでしたか。

三浦:長いガラス棒を持ったおじさんが普通に街中歩いているし「本当にガラスの町だ!」って。
どこでも誰でもガラス作っているんです。
バーナーワークやっていたり、もちろん吹きガラスやっていたり・・・。
で、みんな、馬を作るんです。
観光客相手に、巻いてきたガラスを一回も焼き戻しせずに、シャシャシャシャっと瞬間的に馬にしてしまう。
「こりゃすごい」と(笑)。

三浦侑子さん作者インタビュー2024

吹きガラスのイメージ

三浦:で、その子と一緒に富山のガラスの学校にも行くことになりました。

-:二人ならではのトントン拍子なのかもしれません。

三浦:はい。そういう連れ合いがいたからこそ動けたという部分もあります。

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-:富山では吹きガラス以外も経験されたのですか。

三浦:はい。その上で、私には吹きガラスが一番しっくりきました。
ただ、よく言われる「アスリートみたいですね」なんて言われてしまうと「いえいえ、そんなストイックじゃございません」って言いたくなります(笑)。
男性の作家さんなんかに、走ったり、身体鍛えたりしている人が多いので、余計そういうイメージが強いのかもしれませんが、全然そんなことないです。
走るなんて、ぜったいしない(笑)。

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うつわを作る

-:富山の学校の後はどうされたのですが、

三浦:静岡の磐田市にある工房に5年いました。
同じものを淡々と同じように作る基礎はそこで多少は身についたのかなと思います。

-:そのあと独立ですね。最初からうつわを作られていたのですか。

三浦:最初の最初はオブジェというか、ガラスの野菜というか・・・、そのようなものを作っていました。
でも、いくら作っても、アートというか、そういう崇高なものになる気配が全くない(笑)。
いつまでたっても「置物」なんです。
少し迷いました。
で、あらためて「そもそも吹きガラスってなんぞや」みたいなところに立ち戻ろうと。
それまでは「自分が何を作る」とか「自分がどう表現する」とか、そういうところばかりに目が行っていたのですが、勉強し直してみると、そもそもうつわなんですよね、吹きガラスって。
本当に実用品。

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-:吹きガラスという技術は、いっぱい作ろうと生まれてきたわけです。

三浦:何も変わっていないみたいですね。

-:すごいですよね。本当に大発明。

三浦:でも、誰が発見したってことにもなっていないじゃないですか。
多分職人さんの中で「あれ、なんか吹けるぞ」みたいに進んでいったのでしょうね。
で、それが始まってから100年以内にはポンテ取るとか、竿付け替えるとか、技術が完成して、作られるものもしっかりとうつわの形状になっていた。技術そのものはそこから2000年変わっていない。
そう考えていたら、うつわが面白くなってきたんです。やればやるほど深まっていく実感もありました。

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うつわ作りの先生

-:三浦さんのうつわには、骨董やアンティークのエキスも感じます。

三浦:やはり歴史から入っているので、そこからです。
とりあえず、図書館や美術館に行って、端から全部見ようと。

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-:実際古いモノを参考にしたり、模されたりしていかがでしたか。

三浦:昔の人は、すごいなと思います。
「どうやってこれを作っていたのだろうか」というものが沢山あるので。
最近やっとできるようになりましたが、例えば、この高台の作り方がずっと分からなかったんです。
真横からの一方向の写真しかなくて。
他のガラスを持ってきて付けているのか、折り返してあるのか、どっちだろうって。

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-:どうやって判明したのですか。

三浦:数打ちゃ当たるです(笑)。色々試しました。
あと、これ、正倉院のものだったのですが、どう作るのが分からなくて、やはり数を打ちました。
最近だいぶ「好きな四角」に近づいてきたかなと思います。

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アイスクリームグラス

三浦:これがアイスクリームグラスです。

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-:明治大正に、アイスクリームグラスなんて洒落たものを・・・。
当時、みんな、そんなにアイスクリーム食べていたのでしょうか。

三浦:それも、調べました。アイスがいつ入ってきたのか・・・。
どうも鎖国が解けたタイミングで、アイスクリームが入ってきたようで。
でも、相当珍しいものだったとは思います。

-:取っ手をつけるなんて、発想がすごいですよね。
当時の日本で、取っ手付きのうつわは、一般的ではなかったはずです。
カスタードカップのノリですよね。
で、三浦さんのアイスクリームグラスは取っ手の形を変えられたのですね。

三浦:自分なりに自然な形で、安定して作れるようにアレンジします。

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-:他に三浦さんがガラスのうつわを作る上で気にされていることはありますか。

三浦:食卓に馴染むこと。あと重さは気を付けています。
特にお皿などは、重いと使わないし、かといって薄すぎると怖いわけです。
できるだけ土モノのお皿と扱いが感覚的に変わらないように作っています。

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選ぶ楽しみ

-:展示会、宜しくお願いします。

三浦:最近、大きめのサラダボウルを作っていて、一点一点大きさやかたちを変えています。
小鉢のような銘々のものなら揃っているほうが使いやすいと思いますが、大きいものは色々あったほうが家族構成や使い道で選んでいただけるかなと思いました。
選ぶのも楽しんでいただけたらうれしいです。

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-:有難うございます。楽しみにしています。

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