作者インタビュー 日下華子


2016年4月20日からはじまる
「今様色絵とスリップウエア」日下華子×山田洋次 二人展に向けて
作者の日下華子さんにインタビューをしました。
九谷青窯でのインターンシップからスタートした日下さんのものづくり。
その根底には、いつもだれかに喜んでもらいたいという想いが流れています。

九谷青窯のインターンシップがスタート
秦さんが「ついでに絵も描いて行きなよ」と。

花田: 日下さんは、北海道の出身ですよね。(以下 花田-)

日下: はい。札幌です。

-: ものを作ることに興味を持ったのは子どもの頃ですか。

日下: 小学校の時から、美術や図工が好きで、ある時先生が、個人的に写生大会に連れて
行ってくれたんです。そうしたらそこで、予想外に賞をもらってしまって・・・(笑)
課題は赤レンガ庁舎(道庁旧本庁舎)だったんですよ。
そのあたりから、楽しいなって思い始めました。

-: 赤レンガ庁舎で絵の才能が開花したんですね。

日下: うーん、でもわたし、多分絵は得意じゃないって思っているんです。
だから、描くよりも作るほうだなと思って工芸の世界に入って、ロクロをやっていました。

-: でも結局、今は絵を毎日描いている・・・(笑)

日下: ほんと、不思議ですよね。
そもそもうつわに絵を描くことになったのは九谷青窯でのインターンシップがきっかけでした。
「ロクロやりに来たら」って秦さん(九谷青窯主宰)に誘ってもらって。
で、ロクロひき終わったら、今度は秦さん「ついでに絵も描いていきなよ」って。

-: 秦さん、そういうところ、上手いですね。

日下: その時が初めてです、ちゃんと筆とゴスで焼き物の素地に絵を描いたのは。
そして、出来上がったものを友達に見せたら、反応がいい意味で予想に反していたんです。
それまでは白いものばかり作っていたんですが、絵付けって人を惹きつける力があるんだなと。
自分の絵付けが人を笑顔にすることを目の当たりにして、
そこで初めて「面白いかも」と思いました。
青窯のインターンシップが無かったら、今頃白磁の仕事をしていたかもしれません。

-: 九谷青窯の7年間はどうでしたか。楽しかったですか。

日下: 入った年は楽しかったですよ。それから段々現実に直面するようになる(笑)。
でもあらためて、青窯ってありがたいところだなって、感謝しています。
入ってすぐ3ヶ月間、自分で考えて作らせてくれるところなんて、なかなか無いですよね。

-: 確かに。日下さんはなんでうつわづくりを選んだのですか?

日下: 最初建築の勉強をしていました。ただ、建築は私にとって、ちょっと大きすぎたというか。
物理的な話だけでなくて・・・とにかく、自分の手には負えないな、と感じました。
多分その時、自分の手の中に収まるものを作っていたかったことに、気が付いたんだと思います。
で、工芸。そして、ロクロをやってみたら、かなり強くピンときた(笑)これだ!って。

-: ロクロ、楽しくてよかったですね。

日下: 今も、絵付けよりロクロが好きなんです。

-: ご自身で、絵付けが得意じゃないって言ってしまうところに、日下ワールドの秘訣があるのかもしれません。画力偏重にならない、というか。日下さんの絵付けは、うつわの中で実に活き活きとしていて、うつわの文様としてすごく優れているんだと思います。
モチーフの選び方から始まって、余白も含めた構図の取り方、デフォルメの仕方・・・
上手くて普通に出来ることではないと思います。かといってわざとらしくもないし。

日下: 元々、シンプルなものが好きだということもあるのかもしれません。

うつわを作りで、だれかに喜んでもらいたい。

-: そうなんですね。日下さんがうつわを作りながら願うこと、なにかありますか。

日下: だれかに喜んでもらいたい、そう思って作っています。身近な誰か一人でもいいんです。
私の作るもので、誰かの暮らしが少しでも潤えば、よかったなって思えます。
例えばオリーブの文様は、長くやっていた仕事を辞めて、新しい道へ進もうとしている友人を
想いながら作ったんですよ。実り多い将来になるようにって。
それでオリーブの文様は生まれました。

-: 日下さんにとってうつわの理想像というものはありますか?

日下: 古いものでも「本当にその時代に作られたの?」っていうくらい、
新鮮なものありますよね。すごいなあ、って思うし、
自分もそういうものを作りたいなって思っています。
多くのものは作ってから10年20年経つと、どうしても、どこか古臭くなってしまいがちですよね。

-: 古いけど、古臭くないものがいいですよね。

日下: そうそう。
で、時代が変わっても世代が変わっても、若い子にもおばあちゃんにも
受け入れられるようなデザイン。

-: 例えば、どんなものでしょうか。

日下: 根津美術館で見た乾山の椿の輪花向付は、何度見ても新鮮。

-: そういう気持ちをご自身も、使う人にも感じてもらいたいんですね。

日下: はい、いつも思っています。

-: 理想は高く。青窯にも日下さんに憧れて入ってくる人たちもいるそうですね。

日下: そうなんですか。初めて聞きました(笑)。

このかたちに、この文様!
誕生した自信作、プレッツェルのお皿。

-: 今回の企画展ですが、新作がとても充実しています。今回の「私の自信作」は?

日下: プレッツェル文様のお皿!

-: あれは、日下さんの才能全開ですね。

日下: 自分でもはまる瞬間があるんですよ。このかたちに、この文様!って。

-: あれ、素地は元々日本のものですか?ヨーロッパのものにも見えるけど。

日下: 確か日本のものだったような・・・実はだいぶ前に作った型なんです。
でもなかなか合う文様が見つからなかったんで、ずっと寝かしてあったんです。

-: やっと、世の中に出てくることになりました。

日下: 喜んでもらえるといいな、って思います。

-: 企画展、宜しくお願いします。今日は有難うございました。

日下: 有難うございました。



企画展名:今様色絵とスリップウエア
開催期間:2016年4月20日(水)~ 30日(土)午前10時30分~午後7時
※会期中無休

《写真》
左側:山田洋次 手前から、ハンドルマグ/胴径7.5×高さ8.5cm(取手なし)
ジャグ(M)/胴径10×高さ18cm(取手なし)
右側:日下華子 手前から、サンダーソニア小鉢/径11×高さ5.5cm、
サンダーソニア深鉢/径17×高さ19cm

2名の作者のうつわは【こちら】からご覧ください。

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