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作者インタビュー 林拓児


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いいな、と思うものを自分で作りたくなる

花田: ご実家が元々窯業会社であったことも、現在の仕事に至った理由のひとつなのでしょうか。(以下 花田-)

林: 関係ないことはないと思います。ただ、気が付いた時にはモノを作ることが好きでした。
身の回りのものや、いいなって思うものを見ると、自分で作りたくなってしまうんですよ。

-: そうなんですね(笑)。何を作っていたのですか。

林: シルバーアクセサリーを作っていたこともあります。
あと、大学時代、釣りが好きだったので、釣りの道具、木を削って自分でルアーを作っていました。どんなかたちでも作れましたよ。

-: 見よう見まねで?

林: 最初はルアーの改造から始めました。
でもね・・・結局、自分でいじったものって魚釣れないんですよ(笑)。

-: (笑)ありがちな話ですね。

林: いじり過ぎちゃうとダメなんです。
それでもたまに釣れるのがうれしくて、色々いじっていました。吹きガラスも一時期やっていたな、そういえば。

-: 学校では焼き物の勉強をしていたのですか?

林: 大学の専攻は化学です。

-: 意外です。

林: 本当はデザインの勉強をしたかったんです。
プロダクトデザインにも興味があり、そういうところを受験していたのですが、予備校のカウンセラーの方が、僕に黙って願書を送っていたんですよ。
僕の成績を見て判断したらしいんです。化学は僕の希望ではないのに(笑)。

-: 化学の成績が良かったのでしょう。

林: いえいえ、他がひどすぎたんですよ(笑)。化学くらいしかとりえがなかった(笑)。

-: 化学の勉強はどうでしたか。

林: そんなに抵抗はありませんでしたが、とにかく僕はできない子どもだったので、なんの興味もないというか・・・単位とれればいいかなくらいの話しですよ。
親に迷惑をかけなければいいかなと。僕らの頃の大学生ってそんなものじゃないですかね。

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-: それでもうつわ作りの道に進んでいく。

林: 大学はそんな感じで終わりまして、卒業後は服の販売をしたり、釣具屋さんで働いたり・・・家業を継ぐ覚悟も決まらないままいました。
小さい頃から4代目の僕が継いでいくというのはなんとなく決まっているような雰囲気だったんです。
それに対する反発心もあったのかなあ・・・でも、結局しばらくして、家業を継ぐことも考えながら陶芸教室に通うようになるんです。
家の手伝いをしていたので鋳込みの仕事は出来たんですが、ロクロを触ったのはその時が初めてでした。

-: 家業の会社なのか、陶芸家として生きていくのか、ですね。

林: 僕の中では大量生産窯業と手作り陶芸の間で、揺れていました。釣具屋の仕事で生活しながら、陶芸教室に通っている中でね。
その頃、釣りなんかをしながら、そういうこと考えるんですよ。
代々引き継いできたもの、自分に与えられているもの、社会の情勢、いろいろな事がグルグルと頭を巡る。

-: 悩ましいですね。
おじいさんやお父様が家業を必死に守っている姿も見ていて、またその仕事の魅力も分かっている。
でも自分個人で物を作って生きたい気持ちもある。
そして、今は瀬戸の窯業工場ではなく、一人の作家として生きているわけですね。

林: あの時期があったから、今があるとも言えるんです。僕にとっては大事な時間でした。
林窯業としても一年間は働いて、そのあと窯業試験場と瀬戸窯業訓練校で1年づつ勉強しました。現在は、かたちを変えて引き継いでいる気持ちでいます。
窯業、陶芸の両方にそれぞれの在り方があるんだと思います。
ただ、林窯業は土鍋であったり、水をろ過するものを作っていたり、食器ではない方向に移っていたのですが、僕は食器を作っていたかったということもある。

-: 食器を作り続けられる上での選択肢が陶芸だったと。
それでも、小さい頃家業を手伝う中で身に付けられた感覚もあるのではないでしょうか。

林: あの時こうしていたのはこういうことだったのか、と親父がやっていたことにも説明がつくようになりました。

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-: うつわ作りで大切にしていることはなにかありますか。

林: 使えることが大前提ですが、自分が気を使っているのはかたちです。

-: 林さんが目指す形とは、どのようなものなのでしょうか。

林: 一言で言うと、パキッとしたかたちです。
シャープにとか、柔らかくとか色々な表現があると思うんですが、僕の場合は「パキッ」としたいんです。

-: 僕は「カラッ」としたものを感じました。これまた違う感覚ですかね。

林: パキッていうのは、少しの変化で「あまりこういう形見たことないぞ」っていう気持ちを与えたいんです。
一瞬で印象に残るような・・・なんかちょっと違うぞ、みたいな。
昔っぽいけど、なんか今っぽいな、みたいな。釉薬も含めて。

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-: 林さんの仕事を象徴するものは、やはりあの楕円皿でしょうか。

林: 楕円皿は、最初できたとき、自分でもうれしかったです。

-: いつごろから作っていますか。

林: 今年で10年目になります。

-: 楕円皿10周年ですね!

林: 初めは、もう少し平たかったんです。
それも金属的なイメージの釉薬で作ったんですが満足いかずに、瀬戸物祭りで端のほうに置いておいたら、ある方が「すごくいい」って言ってくれて。
うれしかったです、いわれた時は。それを改良していったんです。楕円皿は用途を追求していったというよりは、作り上げたカタチにピンと来ました。

-: 自分以外のもので林さんの好きなうつわはなにかありますか。

林: 瀬戸の昔の仕事は興味があります。石皿、御深井が好きです。
特に石皿のあのカタチが、なんか好きなんですよね。

-: 林さんにとっての夢のうつわって?

林: 南宋の青磁のあの色が好きなんです。、いい色だなー、って単純に思います。
ただ、自分ならどのような形にしていくだろう、というのはこれからですね。

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-: ついに引越しも完了。これからしていきたい仕事はどのようなことなのでしょうか。

林: 人がほとんど来ない場所なので、仕事に集中できそうです。
そうそう、裏山を掘っていたら、粘土が出てきたんです。砂利分の多い、単純な赤土なんですが、試してみようと思っています。
あと、今は仕事に追われすぎていて、新作を考える時間も無いので、そういう時間も作っていきたいと思います。

-: さて、10月の安齋さんとの展示会、宜しくお願いします。

林: はい。花田では初めてだし、安齋さんとも初めてなんですが、もともと知っていたし、安齋さんのうつわを好きで、カップ&ソーサーも使わせてもらっています。それなので楽しみです。


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