木のチカラ 作者インタビュー


木のチカラ 作者インタビュー

木のチカラ 作者インタビュー
「木のチカラ展」では日頃からお付き合いのある木工作者の方々に制作をお願いしました。
やきものと木工では素材、制作方法、取り扱い方法、強み、弱み・・・
異なる部分もありますが、一方で、作り手の姿勢や想い、うつわとしての魅力など、共通点と感じるものも数多く存在します。
今回は、そんな「木のチカラ」を探るべく、3つのテーマにて、作者の想いを届けたい思います。

木のココが好き・・・なぜ木工の世界に?木に魅せられるワケ。
私はこう使う・・・木のうつわを楽しく使うため、木のチカラを知る作者ならではの使い方指南。
木に「ありがとう」・・・多くの木工作家が持つ木への感謝。


■質問1:木のココが好き

岡野達也

木は年月と共に木肌の色が変わり、傷がついたり汚れたりして、味わい深くなっていく、使う者と一緒に年齢を重ねていく感じが好きですね。




乾喬彰

木工業を営む父の影響もありこの世界に入ってきましたが、ドイツ留学時、教会の手すりや椅子のツルツルになった感じを見て「木って、メチャクチャいいな」と思ったんです。
それまでは現代の木工作品は見ていましたが、百年、千年経った木はあまり見ていませんでした。
鉄も千年、二千年経ったものって格好いいんです。
朽ちてボコボコになっているような・・・。
あと、古材は既に経年変化していますが、例えばこの棚板が、椅子の背板になるとまた違った年の取り方をし始めます。
古材ならではの「艶を取り戻す」みたいな経年変化にも惹かれます。
木って、切った後でもリアルに呼吸しているしような気がするし、なんか「主人公感」がするんですよ(笑)。
そして、木の優しさ。 固くもないし、柔らかくもない。
杉みたいに柔らかい木だと「人にぶつかっても、自分がへこむことで相手を傷つけない」という相当な「良い人ぶり」も魅力です(笑)。
「自分が傷ついて人を守る」という・・・。
で、その傷すら、またいい。 作業中の音も好きです。
のこぎりの「ギコギコ」とか、カンナの「シュッシュッ」とか・・・。
僕の好きな音楽との相性もいいんです。
ただ、木だけで作り上げてしまうと重いので、金属などの他素材は必ず使うようにして軽やかにしています。
金属が活きる方法・・・例えば、補強は勿論鉄のほうが細くで出来ますし、しなやかです。
木はポキっていっちゃいますからね。
それぞれの良いところを出し合うことができればいいな、と思っています。


小倉広太郎

お盆や茶托など、焼き物を受け止める柔らかさを持っていると思います。
例えば、焼き物と木があたる音って心地良いですよね。
そして、同じ木目が、一つとして存在しない。
目の前にある木目をトリミングして、作品にしていく。
与えられたものをベースに仕上げていく作業が楽しいんです。
僕の性格的にも何もないところから作り上げるより、前提がある中でやっていくほうがあっている気がします。

木を選ぶのも大事で、木を沢山買ってきて積んであります。
独立当初は、良し悪しも分からないので、市(いち)で失敗もしましたが、それを繰り返して、今に至っています。
多くの人たちが求める木が自分にとって良い木とも限らず、見向きもされない木でも、自分の仕事に合っているものもあります。
木との出会い・・・僕にとっては大切な瞬間です。

与えられた木目を受け入れる。
割れていても歪んでいても、抗えないそういう自然を活かしながら、抵抗せずにこれからもやっていきたいと思っています。


土井宏友

修行していた輪島では陶器やガラスだけだと、食卓がカサカサするっていうんです。
木を入れるとヌルッとする、というか、食卓に潤いが加わるんですよね。

そして、木は一つ一つが実に違います。
例えば、この縄文杉、この異常な量の木目、この端切れの木目を見るだけで、木の生えていた状況も想像できて、生い立ちも見えてくる。
或いは、鎌倉時代の木もカンナをかけると、また動き出す。
有機物である、ということを実感する瞬間です。


藤崎均

木それぞれの「個性」に魅了されています。
元々僕は家具工場で働いていて、その頃は設計事務所からの指示通りに作っていました。
自分で仕事をするようになってからは、その都度、違う木を使えるので、その時に色々考えるのが面白い。

個性と言っても木目もあるし、暴れる暴れないもある。
最初は動かないけど、急に動き出すこともあります。
特に、年数が経っている木は好きです。木目が詰まってくる。
そうすると雰囲気も良いし、反りにくい。
針葉樹なんかは100年くらい経ってくると随分木目が詰まってきます。

富山孝一

使っていて、愛着が湧きやすいと思います。
1本1本違うし、変化も楽しめます。
木目や虫食い等々もあるし、同じ木の種類でもそれぞれ手取りが違うんです。
一般的に欠点と言われる節目なども、ものによっては僕は「美しい」と感じます。
それぞれが美しいかどうかは、見る人が決めることですから。

平岡正弘

天然の素材であり、適度な柔らかさもあり、温かみが感じるところが一番の魅力です。
材それぞれによって、色見や木目、硬さ、それぞれに特徴があって難しいところもありますが、そこにも魅力を感じます。



木のチカラ 作者インタビュー

■質問2:私はこう使う!

岡野達也

私の制作する木皿は少し大きめのサイズが多いので、パスタとサラダを一緒に盛ってワンプレートとして使って頂けると良いかもしれません。
妻は野菜炒めドーン!麻婆豆腐ドーンみたいに使っています。
最近はお客様からアウトドアで使っていると聞いています、落としても割れにくいのは木皿の長所です。

乾喬彰

僕は毎日キャンプみたいな生活をしているので、普通の方々の参考になるか分かりませんが、大きなカッティングボードをお皿代わりに使っています。
一人で銘々皿として、鍋敷きとして・・・。
実に万能で、ピザそのものは勿論ですが、生地捏ねの段階から使えます。
木だと食洗機使えないしカビのことが気になるかもしれませんが、あまり神経質にならずに気軽に使って欲しいと思います。
刃跡も最初は目立ちますが、数が増えてくれば景色にもなります。
あと、パン皿には木が一番。
湿気を木が吸ってくれて溜まらないので、パンが最後までサクサク食べられます。
切るのもそれを使うので、洗いものがひとつ減ります(笑)。
たまに、サラダなどにも使いますが、焼き物も好きですので、無理に木を使うことはしていません。


小倉広太郎

一見、扱いにくそうだけど、使い慣れると扱いやすいのが、木のうつわです。
「雑でもよいので、ジャンジャン使ってください」と言っています。
染みや傷が、道具の味や表情になりやすいのが木の道具ですし、子どもにも使わせやすい。
パン、サラダは勿論、餃子、カツオのタタキ、炒めもの・・・僕は色々使っています。
漆のものは煮物なんかにもオススメです。
僕はナイフ、フォークの跡もあまり気にしていません。
昔のヨーロッパの木のうつわにはフォークやナイフの跡が付いていて、またそれが格好いいんです。

食卓に木が一つ入ると潤いも出るのではないでしょうか。
そして、外に気軽に持って行けるのはいいですね。
天気良い日は外に机を持っていって、庭で食事をしています。


土井宏友

お盆や汁椀など木が主流のものも勿論ですが、僕は煎茶やコーヒーの道具も木で作るでしょう。
抹茶茶碗や煎茶碗は焼き物で出来ているものが多いので、亜流というか我流というか、本筋ではないのかもしれませんが、そういう漆や木で作ることにも僕には意味があるんです。

「軽い」「割れない」「携帯が簡単」。
携帯できて、本格的な味が出せることに注目しています。
なので、ドリッパーや煎茶道具は野点などを想定したかたちやサイズ取りになっています。
外でも淹れたてのコーヒー飲んだら美味しいでしょう。


藤崎均

イベントで、木のうつわにフランス料理を盛り付けたくて、お皿を作り始めました。
で、フランスの食器を見始めたのですが、ディテールなんかを見ていくと、元々は中国に倣っていて、それがシルクロードを通じて伝わってきていることに気が付きました。
そうなると、もちろん和にも合うわけです。
欅やホウの木を使うと和の印象になるし、ウオルナットやパープルハートなどの外材を使うと、洋の印象になります。

カッテイングボードは便利です。
包丁やナイフで傷がついてもいいように、くるみ油を塗っていますが、乾いてきたら、くるみの実をつぶせば油出てきますし、それが面倒でしたら、オリーブオイルを使っても良いと思います。

富山孝一

自分で使うために作ったコーヒーメジャーは愛用しています。
箸、カップ、チーズボード、カッティングボード、バターナイフはどれも十年くらい使っています。
木以外のうつわだと、焼き物や琺瑯も多いです。

平岡正弘

現在私はカトラリーを主力として作っていますが、カトラリーは「触って」、「口に触れて」と、とても身体に近い道具です。
まずはカトラリーで、木の魅力を五感を通じて感じてもらえると嬉しいです!



木のチカラ 作者インタビュー

■質問3:木に「ありがとう」

岡野達也

木工職人、木工作家にとって、木は無くてはならない存在です。 使う人が気持ち良く、長く使えるものを作るように心がけています。
モノ作りはどうしても端材が出てしまいます、 木を無駄にしたくないのでその端材を使用できるところまで使って小物制作をしています。
木を最後まで無駄にしないで使うことで感謝を表せればと思っています。

乾喬彰

木を見て僕が持つ「格好いい!」という気持ちは大事にしたいと思っています。
出来上がったときに、その「格好いい!」が崩れてしまっていたら意味がない。
活かすようにしたいと思います。
木の良さが損なわれないように・・・。
あらためて言葉にするのも照れくさいのですが、僕にとって、木は「格好いいもの」で、その部分に感謝しているという感じです。

小倉広太郎

素材としての木も好きですが、生えている木にも力をもらっています。
木には場を作る力があるような気がしていて・・・例えば、建築でも、そこに大きな木が屋根のように茂っていると、雰囲気が変わりますよね。
町に出て行っても、ついつい木を探してしまいます。
木があるからその場の雰囲気がよくなる。
皆が集まってくる。 本でも読んでいたくなる。
木って季節に合わせて伸びたり、葉が生い茂ったり、紅葉したり、日々変化していきますよね。
花田さんのある九段も緑が多いので好きな場所です。

土井宏友

漆には感謝しています。
色々とかぶれやすい僕がなぜか漆にだけはかぶれません。
縁としか思えません。
そのおかげで、この仕事をしていられます。
有難い話です。


藤崎均

怒られそうですけど、案外何も思っていないんです(笑)。
ただ、自分では無意識だったんですが、持っている木材の量が普通よりも多いみたいで「本当に、木が好きね」と工房に来られた方に、驚かれます。
意識もしていませんでしたが、こんな量になってしまった。

富山孝一

11年間木工の仕事をしていますが、今生きているのは木のおかげなので感謝せざるを得ません。

平岡正弘

木工の技法にもよると思いますが、一般的に木工は形を成型するのに手間暇がかかると感じています。
形を成型したあとの磨く作業や漆作業は地味で、さらなる手間暇がかかります。
また、材の乾燥など、年単位の時間がかかる事もあります。
このように、ほぼ独学で始めた私に、難問を与えつづけている木ですが、そのおかげで根気強さなど成長させてもらった所もあり、そこは感謝している部分でもあります。



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