竹中悠記さんインタビュー


竹中悠記さんインタビュー

モノを作って食べていく…

花田: 竹中さんは、小さいころからものを作るのは好きだったのですか。

竹中: 絵を描くのは好きでした。 漫画みたいなものを描いたり…。

-:ガラスと出会うのは?

竹中: たまたま本で見て、魅かれていきました。
そして、短大卒業後、東京ガラス工芸研究所に通い始めました。

-:それでも、短大は行かれたのですね。

竹中: 役所勤めの父や、教員の母は、自分の娘がやりたいこと、わけわからなかったと思います(笑)。
「『モノを作って食べていく』って何??」って(笑)。
そういう両親の意向もありました。
ちなみに、短大は英語が受験科目にないところを選びました(笑)。

溶けているガラスに手を焼く

-:東京ガラス工芸研究所はいかがでしたか。

竹中: とにかく、ガラスを扱ってみたいとしか考えていなくて。
技法なんて、何があるのかさえ全く知らないから、まずこそからです。
ガラス工芸研究所ならステンドグラス以外は習えます。
バーナーワーク、パート・ド・ヴェール、吹きガラス、カットガラス…、全部習って、そこから自分に合うものを選べばいいやって思っていました。
自分が吹きガラスに向かないことも、そこで気が付きました。

-:そうでしたか。

竹中: あれはねえ…(笑)。
溶けているガラスが、自分には合わなくて…吹きガラスって、固くなったらもう一回熱してとか、柔らかすぎたら状態を整えてとか、こっちがガラスに寄り沿うじゃないですか。
そういうの、無理なんですよ(笑)。

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-:「ガラスからわたしに寄って来てよ」と(笑)。

竹中: 好きだったら、頑張って寄り添おうとしたかもしれません。
いずれにしても、溶けているガラスと私は縁が無かったということです。

-:溶けているガラスがダメだとなると相当選択肢は狭まってきます(笑)。

竹中: そこで、パート・ド・ヴェールです。
絵を描くことが好きだったし、自分の手を動かして、指先を使って、自分のペースで細かい作業を少しずつ積み上げていくという工程が合っていたんだと思います。

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印象を頼りに

-:卒業後、すぐ独立されたのですか。

竹中: いえ、石川県の能登島で講師/作り手の仕事をしたり、フリーターをしたり、学校で保健の先生をしていたこともあります。

-:色々されているのですね。

竹中: どの仕事も楽しかったです。

-:しばらくして、この鳥取で独立です。 始めたときからうつわでしたか。

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竹中: はい。 パート・ド・ヴェールだとオブジェなどが多いのですが、私は日常で使うものを作りたいと思っていたので、最初から「使える」うつわでした。

-:うつわを作るうえで、大切にされていることはありますか。

竹中: 古いものでも何でも、何かを見て「素敵だな」と思っても、その表面をなぞるような仕事をしないようにしています。
なので、影響を受けてもそれを見ながら作ることはせずに、記憶の中で、自分がその時に受けた印象だけを頼りに仕上げます。
あとからそのヒントになったものを見ることがあるんですけど、全然違うものになっていて自分でも驚きます。

-:外見は違っても、何かしらインプットされているはずです。
古いもので好きなものはありますか。

竹中: うーん、何が好きだろう?色々あるはずだけど、思い出せません。

-:竹中さんは、そういう感じなのですね。
印象で入ってくるから、頭に個々の情報としては蓄積されていないというか…。

竹中: そうなのかもしれません。

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自分の好きなラインやかたち

-:うつわのかたちは、どうやって決まってくるのですか。

竹中: 日常の中で「このかたち使いやすいな」とか「これを盛りたいな」とか「この形が欲しいな」とか思ったときが始まりです。
例えば、これも元々、焼き物の小皿使っていて、いいなと思って作ったものです。
結局これも、元の焼き物とは全く違うかたちになりました(笑)。

-:最初から何かを乗せたかったのですか。

竹中: クッキ-です。私、甘いものが好きなので。

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-:新作の場合は、何かでまず原型を作るのでしょうか。

竹中: 最初は絵で描きます。
自分の好きな線を何回も描きながらだんだん形にしていって、しっくり来た時にそれが何センチか測ります。
で、一般的な寸やインチの単位にあわせて、使いやすいサイズに落とし込んでいきます。

-:原型はすぐできるものですか。

竹中: 調子がいいときは半日で。

-:調子によるのですね。

竹中: 一時間くらいやってみて、ピンと来ないときは、そこで一旦とめます。
「本日は調子が悪い」と(笑)。

-:原型造りは楽しいですか。

竹中: 何度もやっていると自分の好きなかたちって大体決まってくるじゃないですか。
「あ、これ、わたしの好きなラインだな」って作業の中で見つかることがあって…。
それを平面から立体にしていく作業は楽しいです。

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やってみたかった三角

-:次に模様をつけていきます。

竹中: 模様…浮かぶときは楽しいですけど、浮かばないときはつらいです(笑)。
かたちを作っている段階から、既にアイデアが浮かんでいることもあるし。

-:最初から決まっている場合もあるのですね。

竹中: ありますけど、すべて決まっていることはほとんどありません。
例えば、これは、この見込みの三角がやりたかったんです。
線ではなく、面で見せる三角を。

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-:うつわのかたちと、模様の三角が決まっていたのですね。

竹中: 周りはそれが引き立つようなものを組み立てていきました。

-:周りはスッキリ決まっていくものですか。

竹中: 最初は適当に色々やっていくんです。
石膏の型に直接10Bの柔らかい鉛筆で描いていって、ダメだなあと思ったら、ふき取って、ってそれを繰り返すんです。
でも結局、ガラスになってみないと分かりません。
分かる人は分かるんでしょうけど、私は分からないです。

-:この三角のバリエーションも増えてくるかもしれませんね。

竹中: いや、これはこれだけです。 もう満足してしまったので(笑)。
いつもすぐ満足してしまうので、バリエーションが広がらないんですよ。

-:じゃあ、これを四角いお皿でやろう、とかそういう発想にはならないわけですね。

竹中: ええ。 やってみても、ほかの人は何も思わないかもしれないけど、私は多分モヤモヤしちゃう。
もっと柔軟に、自由にできればいいんですけど…。
別に固執するように誰かに言われているわけでもないのに。

-:モヤモヤするのが嫌なのですね。

竹中: そうです。 わざわざモヤモヤするようなもの作ってもしかたがないし(笑)。

1つのうつわに9色

-:絵の構図ができて、続いて色を決めていきます。

竹中: だんだん自分の好きな色が分かってきたので、その中での組み合わせです。
今は色も増えてきました。

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-:気にしていることはありますか。
あまり色を使い過ぎないように、とか…。

竹中: 全体として、まとまっていればいいので、そんなに気にはしていません。
なので、9色使っているものもあります。

あれを見たくて…

-:竹中さんが考えるパート・ド・ヴェールのうつわとしての魅力は何ですか。

竹中: 「キラキラ」なところ、でしょうか。
私は単純に手が込んでいるものが好きなんだと思います。
うまく説明できないんですが、私は、計算されて緻密なもののほうに、魅かれます。
例えば、洋服や布物でいうと、プリントと刺繍の違いかなと思っていて、刺繍なら「オーー」って思うけど、プリントなら「へーー」となるような…(笑)。
たとえ、それが手仕事であろうと、機械製造であろうと。

-:少しずつ積み上げられたものの奥行の魅力なのかもしれません。

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竹中: 作り手としては、何よりも、お客さんが目の前でときめいてくれるときが、うれしいです。
「わー」って感じで。 私自身も焼き終わって、窯を開けるときが一番楽しみですし。

-:あの、ずらっと並んでいる感じですね。
クライマックス…ですね、作る中では。

竹中: はい。 あれを見たくて、がんばってる…(笑)。
いまだに「あれ?」って予想と違うこともありますが。

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-:窯に入れる前は少し色、違いますものね。

竹中: ある程度は予測がつきますが、結局は焼けるまで分かりません。
ガラスに限らないけど、色って、隣り合う色や合わせる色で、見え方が大きく変わりますから。

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これからも…

-:お話、有難うございました。
これからも、竹中さんの世界を作り続けていってください。

竹中: はい。 どんなに新しい雰囲気で新作を作っても「竹中さんっぽいね」って言ってもらえるのが嬉しいんです。
自分が好きなものに対して、素直にお客さんと共感できているような気がして。
これからも、そういう仕事を続けていきたいと思っています。

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