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鈴木重孝さんインタビュー


鈴木重孝インタビュー

ウロウロしていたら陶芸同好会

花田:重孝さんは、どのように焼き物の世界に入ってこられたのですか。(以下花田-)

鈴木:高校近くの東京国立博物館は散歩コースで、ちょこちょこは見ていました。
特に常設のほう…。 当時は50円で入れたんです。
法隆寺宝物館も何度見に行ったか分からないですよ。
あと、実家から日本橋三越に行く途中に骨董屋が3軒くらいあってね。
実家にはガラクタしかないけど(笑)、周りには色々ある環境でした。

鈴木重孝インタビュー

-:重孝さん、ご実家は?

鈴木:メリヤス問屋です。エトワール海渡さんとかと同業で。
今はマンションだらけだけど当時は馬喰町のあたりは問屋街でね。
懐かしいな。まあ、焼き物は本格的には大学の同好会です。
入学式の日って、中庭に部活動や同好会が出店するじゃないですか。
最初、美研に行ったら、絵ばかり描いているんですよ。

-:絵が悪いわけではありませんが(笑)。

鈴木:まあね。
僕は立体やりたかったので、困ってウロウロしていたら陶芸同好会にあたりました。
色々話していて、好き勝手作っていいことが分かったので…。
あ、こんな理由じゃ、あまり話になりませんかね…。

-:大丈夫です。
同好会では、どんなものを作っていたのですか。

鈴木:手あたり次第。そういう意味では今と変わりません(笑)。

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-:そのころ好きだった焼き物はどのようなものですか。

鈴木:もう、完全に唐。中国の青磁でした。
そこから宋のあたりまで好きになっていって…。

「優」がひとつ足りなくて…

-:それが塚本(快示)さんへの弟子入りにつながるのですね。

鈴木:4年の就職活動時に…、全国のやきものの場所をまわったんです。
その中で先生のところがいいなと思いました。

-:卒業後、普通に就職することは考えなかったのですか。
学部は経済ですよね。

鈴木:本当は銀行に行って実業家になりたかったんですけど、オイルショックもあったし…。
あと、都市銀行へのエントリーは「優」の数が3年時で20個必要なんですが、足りなかったんですよ。
僕19個だった…。

-:えーー、本当ですか(笑)。

鈴木:できすぎた話だと思うでしょ(笑)。本当ですよ。
いずれにしても「ま、いっか」ってなっちゃいました。
で、アルバイトを始めて、全国のやきもの産地をまわる資金を作りました。

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速くてうまい

-:塚本さんのところに、いきなり行ったのですか。

鈴木:そうそう、陶芸同好会の仲間と、以前一度行ったことがあったんです。
荒川豊蔵さんとか…あの辺を色々まわりました。

-:塚本さん、学生がいきなり訪れて、会ってくれるのですか?

鈴木:逆です。学生だから会ってくれるんです。
社会人だったら、手ぶらで、紹介状もなく行けません。
学生って、そういうの、許されるでしょ。

-:特権ですね。

鈴木:学生だからって、ご飯もごちそうになっちゃうし(笑)。
それでまた、一緒に行った奴が図々しい奴で色々要求するんですよ。
しまいには「あの彫りを実演してくれ」って。

-:一番見たいところじゃないですか。

鈴木:「おいおまえ、それはちょっと図々しいんじゃないか」なんて言いながら…

-:内心「よく言った!」って感謝してる(笑)。

鈴木:そんなとこ(笑)。塚本先生、やってくれるんです。それで感動しちゃって。
「この人すごい人だな」って。

-:それは、してくれたことですか。技術的にですか。

鈴木:両方。下絵を全く描かずに、いきな牡丹文を彫り始めたんです。
あっという間。とにかく速くてうまい。

努力と思いやり

-:塚本さんのところでの時間はいかがでしたか。

鈴木:最初はほとんど雑用でしたが、その内先生の仕事も一緒にさせてもらうようになりました。
ろくろなんかの手仕事は結構頼んでくれました。

-:評価されていたのですね。

鈴木:さあ、どうでしょうね。そうだとよいのですが(笑)。

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-:塚本さんの仕事振りはいかがでしたか。

鈴木:ビックリするくらいの努力家です。
ご本人は努力なんていう風には思っていないでしょうけど。
あの頃の塚本先生、今の僕くらいの年齢ですから、よく疲れを知らずにやっていたなと思います。
あと、客人に対しては心から礼を尽くされていました。

-:重孝さんにも、そういうもてなす気持ちは感じます。
いつも色々用意していて下さるじゃないですか。

鈴木:たまたまですよ(笑)。
でも、大切だと思いますよ、人を思いやることは。

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プロの仕事ぶり

-:技術的なことで学んだことはありましたか。

鈴木:プロだなと思ったのは、必ずリスク分散するんですよね。
例えば、釉薬を合わせるとき、珪石でも、石灰でも、長石でも複数種使う。
そうすると釜戸長石の質が変わったとしても、福島長石でカバーできるわけです。

-:必ずプランBを用意すると。

鈴木:モノづくりの上で、出来ない理屈や言い訳をコツコツと消していくんですよね。

-:プロですね。

鈴木:釉薬については、本当に勉強になりました。
調合は最後までやらせてもらえませんでしたが、プロセスを学べたし、目標を持つこともできました。 特に白磁は今でも自信を持てています。

-:塚本先生仕込みの…。

鈴木:あの調合に近いはずです。 あとは「彫り」も、蓮弁文なんかも覚えたのはあそこにいた時だし、釉薬のかけ方や処理の仕方なんかも。
ああいうのって、どこかでチラっと見ても、分からない技術の細かい部分があるものなんです。
そういうことは行ってよかったなと思っています。

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世の合理性

-:有意義な時間でしたね。

鈴木:よく怒られもしましたよ(笑)。
徒弟制ですから、白でも先生が「黒い」って言えば、黒なんですよ。
ある日「この土、もういらないから捨ててこい」って言われるでしょ。
で、捨てに行ってしばらくしたら「なんで捨てたんだ!」ってね(笑)。

-:ありそうな話ですね(笑)。
誰しも一度は経験していそうな事象です。

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鈴木:その時、気づきましたよ。 学校は世の中の合理性を学ぶところ、で、そのあとは、世の中の不合理を学び続けるんだなって。
そうなってくると、学校で学んだ「合理性」も、逆に合理的に見えなくなってくる(笑)。

-:両方大事ですよね。

いよいよ独立

-:そして二年で独立です。

鈴木:そもそも、あそこに行った途端、そこの工場長に「何しにきた?早く自分で窯築いてやったほうがいいよ」って言われていましたから。
結局、独立して、自分でやって、自分で失敗して覚えていくほかないんですよね。
ただ、そんなこと言っても、僕にはお金がないわけですよ、独立資金が(笑)。
なので、そのあと3年間秋葉原の電化製品の販売の仕事をして、600万くらい貯まった時点で独立の準備に取り掛かりました。

-:重孝さんは色々作られるのも得意ですよね。

鈴木:別に最初から出来たわけじゃないです。やらざるを得ないんですよ(笑)。
お金はないし、廃屋を住めるようにするためには、自分で何でもやるしかない。
今思えば、それが結構面白かった。

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-:その内ピザ窯も作るように。

鈴木:ピザとか、パエリアとか…。焼き物の窯も、通算で10基くらい作っていると思います。
屋根の葺き替え、バス、トイレ、全部自分でやりました。

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-:窯も10台ですか。

鈴木:既製品もいいんでしょうけど、直せないし改造しづらいんですよ。
自分で作ったものだと簡単に壊せますから。特に薪窯なんて、何回壊したか分かりません。
焼き物っていうくらいで、焼くのが一番ミソの部分ですから、それを自分で色々いじれるっていうのがいいと思います。

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半月皿の思い出

-:いままで作ってきたうつわの中で、印象に残っているものありますか。

鈴木:「印象に残っている」と言われれば、半月皿かな。

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鈴木:あんなに、たくさん作ったのは後にも先にもありません(笑)。
作るのは500単位でしたから。花田さんだけでも数千枚は出ていますよね。
しまいには「もう嫌だ」って言ったこともありました(笑)。
そうしたら花田さんの先代「たくさん作らないと見えない世界がある」とかなんとか…。

-:(笑)。1000個作っても見えないのに「いくつ作ったら『その世界』とやらは見えてくるんですか」と。

鈴木:1000も作れば十分「たくさん」でしょう、普通(笑)。

生活を楽しむ

-:これからについては、何か考えていますか。

鈴木:やっぱり粋な仕事をしていたいですよね。

-:さすが、神田っ子。

鈴木:それと、力まずやりたいなと思っています。
ひとつのジャンルでずっとやっていると、僕の場合、重箱の隅突っつくような仕事になって、なぜかだんだん複雑化していくんです。
一度違うことでリセットしないと、仕事がつまらなくなっていくんです。
焼き物だけではありません。 家を修理したり、木工で箸やスプーンを作ったり…、そういうことって、すごく仕事に活きています。

-:精神的な部分ですかね。

鈴木:そうですね。
技術的な意味もありますが、やはり「生活を楽しむ」感覚が一番大切だなって。

-:重孝さんの「生活を楽しむ」ことは、この場所や仕事で表現されるわけです。

鈴木:ここで屋外パーティーをするのもその一つ。
家の中とはセッティングも変わってきて楽しいんですよ。
参加者も僕のうつわを使うのを楽しんでくれるし。
まあ、みんな「ペンションやったら、うまくいくはずだ」とか「料理教室やったら楽しいぞ」とか、好き勝手言っていますけどね。

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-:僕も含めて、周りの「アイデア」とやらは大体、無責任なものです(笑)。

鈴木:僕もその立場だったら、間違いなく言っているね(笑)。

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