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中町いずみさんインタビュー


中町いずみインタビュー

古九谷、なんか凄いぞ…

花田:中町さんのやきものとの出会いは?(以下花田-)

中町:大学生の時の陶芸教室です。
あと、旅行で行った金沢で見た古九谷に、一気にひきつけられてしまいました。

-:県立美術館ですか。

中町:そうです。

-:雉も見つつ…

中町:はいはい。

-:あそこには、魅力的な古九谷も沢山で、誰かに古九谷を好きになってもらおうと思ったら、あそこが一番いい気がします。

中町:古九谷の世界は衝撃でした。
青手とか…。

-:古九谷は、やきものの中でも異色の存在ですよね。

中町:「こんな絵付の焼きものがあるんだ…許されるんだ…」という驚きです。
で、石川県の焼き物の学校を調べていたら、九谷焼技術研修所が出てきたので、卒業後そこに行くことにしました。

-:中町さん、インターネット苦手だって仰っていますよね。
本か何かで調べたのですか。

中町:いや、さすがに私でも、検索くらいはできますよ(笑)。

中町いずみインタビュー

厳しくて有名なところへ

-:研修所のあと…

中町:山本長左先生(妙泉陶房)のところへ。

-:山本長左さんのところ、すんなり入れるのですか。

中町:何度も断られました。

-:何度も行かれるところが素晴らしいですね。

中町:「まあ、そういうものだろう」と思っていましたし…。
頼んでは断られ、の繰り返しで、なんとか入り込んだ感じです。

-:なぜ妙泉陶房だったのですか。

中町:先生の染付が大好きでした。
それと、あそこは厳しくて有名です。
そういう所で鍛えてもらえれば、こんな私でもなんとかなるだろうって。

中町いずみインタビュー

まずは呉須を磨って

-:入ると、まず何をするのですか。

中町:呉須を磨るところから始まります。
朝から晩まで一日中…。

-:どれくらいやりましたか。

中町:入ってから数週間だったと思います。

-:たまに先輩が見に来たり…。

中町:はい。
で「ただ、磨っているんじゃないよ」みたいな(笑)。
「先輩の仕事や会話などを観察しながらやりなさい」って。
つまり、あそこの仕事の仕方や、段取りの仕方なんかを見ておく時間なんです。
呉須を磨るような仕事をしながら、数週間かけてあの場に馴染ませてくれたのだと思います。
その次は型紙起こしでした。

中町いずみインタビュー

「渋滞」と「スミマセン!」

中町:そのあと、やっと筆を持たせてもらいます。
まずは枠線でした。
お皿の縁のちょっとした線から始まります。

-:うまくいきましたか。

中町:最初はプルプル筆が震えながら「遅い!」とか「もっと速く描け!」とか言われながら…。
流れ作業なので、自分が遅いと、迷惑をかけてしまいます。
「枠線まだかー?」って煽られるし。
すぐ隣に、私の次を描く人が作業をしているので、私のところで渋滞です。
「枠線渋滞」ですよ(笑)。
「スミマセン!」連呼しながら、枠線を描いていました。
今でも、枠線を描いていると、あの光景がよみがえってくることがあります。

中町いずみインタビュー

-:職人の方々は何人くらいいるのですか。

中町:当時のことしか分かりませんが、10名以上いました。
枠線の人、見込みの絵の人、濃み(だみ)の人…って感じで。
枠線は下っ端です(笑)。

-:濃み、難しそうです。

中町:濃みは奥さまがやっていました。
でも最後は、やらせてもらえるようになりました。
難しかったですが。

-:いい経験をされたのですね。

中町:3年いましたが、とても勉強になりました。
有難いですよね、お給料をもらって、勉強までさせてもらえる。
一人暮らしできるくらいは用意してくださるのですから。

下書きはしません。

-:妙泉陶房は皇室の仕事もしています。色々学べたかと思います。

中町:印象的だったのは、山本先生の「相手に損をさせちゃいけない、損をさせるような仕事をしちゃいけない、でも自分も損しちゃいけない」というお言葉です。

-:経済的なことだけの話ではないですよね。
で、その相手のため、自分のための価値は自分で作っていくしかないということですね。

中町:そうです。
私もそれは守ろうって。

-:独立後も活きている、具体的な作業上のことも多いのではないですか。

中町:作ることも段取りも、教わった通りにしていることがほとんどです。
あと、鉛筆で下書きはしません。
せいぜいアタリをつけるくらいです。

-:下書きをしないのは山本さんの…

中町:ポリシーです。
ちょっとでも下書きをしようとすると、すごく怒られて。

-:最初はしたくなりそうです。

中町:そうなんです。
でも、下書きの分だけ時間のロスにもなるし、筆に迷いも出ます。
下手でもいから、あまり考えずに自然に描いて、動きがあるほうが良いんです。
鉛筆をなぞると、動きが出ないんですよ。
一個一個微妙に違っても、それが面白いわけだし、手が段々慣れてくるから、そのうち下描きが無いことも気にならなくなります。

-:それなら、今でも下書きへの誘惑にかられることもありませんね。

中町:ないです。
今はあまり細かい絵を描いていないせいもありますが、せいぜい正面のアタリをつけるか、四分割するくらいです。

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わたしの係

-:修業時代…通して見ると、いかがでしたか。

中町:私は「叱られる係」だったんです(笑)。
まあ、いつでも必ず「叱られる係」はいるんですけど。

-:まあ、叱るほうも、叱るほうで心得ているのでしょう。

中町:「怒鳴りつけても大丈夫そう」とは思っていたはずです(笑)。
同期が一人いたのですが、その子は「ほめて伸ばす」でした(笑)。
で、中町は「しめよう」みたいな…。

-:叱られると、その人のことすぐ避けようとする人いますけど、中町さんはそうでもなさそうだし…。

中町:そうですね。
「中町はいつも怒られているけど、怒られているうちが華だよ」って言ってくれる先輩もいましたし…。

言われて嬉しかったこと

-:3年経って独立に向かいます。

中町:辞めるとき、山本先生が「根性ついたな」って言ってくれました。
とても嬉しかったのを覚えています。

-:ずっと見守ってくれていたのですね。

中町:「出来の悪いのが来たなあ」と思っていたでしょうし(笑)。

そして、独立

-:独立は、どうして富山だったのですか。

中町:主人の地元です。

-:作るものは、最初からこういう感じだったのですか。

中町:最初は、妙泉チックな細かい染付をやっていました。
最初は何をしていいか分からないし、そもそもそれしかできませんでしたから。

-:まずは模索ですね。

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ドンヨリは嫌です…

-:中町さんがうつわを作るうえで大事にしていることはありますか。

中町:実用的なのはもちろんですが、健康的なうつわを目指したいです。
「楽しい」とか「面白い」とか「かわいい」とか…そういう気持ちになれるうつわです。
どんなに上手くても、使って、ドンヨリ気持ちが沈んでいくようなものは嫌です。
元気になれたり和めたり、明るい感じでいきたいと思っています。

-:文様の題材は、クラシックにあるものを中町さん流にアレンジしているものもあるし、従来うつわに使われなかったようなものもあります。登山風景とか…。
まあ、山水図の現代版と言えるのかもしれませんが。

中町いずみインタビュー

中町:基本的な部分は古九谷をベースにしています。
そう見えないかもしれませんが(笑)。

虎と竹が「シャー!」

-:うつわの文様を組み立てていくときに考えることはありますか。

中町:テーマや意味を3つ以上含めないようにしています。
例えばこれなら「灯台」「魚」「船」の3要素です。
これ以上付け足したら、ゴチャゴチャし始めます。

中町いずみインタビュー

-:中町さんの絵付けには、物語も感じます。
絵本を見ているような気分になることもあります。

中町:そもそも絵本が好きですから。

-:中町さんのうつわには、動物も多数登場します。
虎、狐、熊&シャケ…最初に描いた動物は何でしたか。

中町いずみインタビュー

中町:最初は虎です。
古九谷は虎が格好良く登場するじゃないですか。
虎と竹が「シャー!」みたいな(笑)。それが好きで描き始めたんです。
でも「これ、もしかしたら猫と間違えられるかも…」と思って、「がるがるがる…」って書き始めました(笑)。

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「熊」じゃなくて「木彫りの熊」

-:動物の中でも特に好きなものはありますか。

中町:熊です。

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-:即答ですね(笑)。

中町:北海道の木彫りの熊が好きなんです。
両親が北海道出身で、子供のころ家には木彫りの熊がゴロゴロありました。
子供の頃は気にもしていなかったのですが、大人になってから見ると、なんかグッとくるんです。

-:熊ではなくて、「木彫りの熊」が好きなのですね(笑)。

中町:そうです。
「木彫りの」熊が好きなんです。

好きすぎて…

-:これからやっていきたいことは何かありますか。

中町:今より健康的になって(笑)、今より面白いものを作りたいです。

-:いいですね。
今、中町さんの「面白いこと」は何ですか。

中町:山です。百名山もいいですけど、近所の山をチョロチョロするのが好きです。

-:オススメを教えて下さい。

中町:立山。いいですよー。
ぜひ登ってください。

-:はい!立山の魅力を言葉で表現できますか。

中町:好きすぎて、言葉にできません。

-:すごいですね、好き度が。

中町:私、山には感謝しているんです。
登山のおかげで、いちいち小さいことを気にしなくなりました。

-:色々気にしていても、本当しょうがないですからね。

中町:そうですね。山登っていたら、小さいこと考えるのがバカバカしくなってきたんです。
それにしても、山は本当に偶然でした。

-:そうだったのですか。

中町:最初は旦那に強制的に連れていかれました(笑)。
富山県民は、必ず立山に登るみたいで、小学校でも学習登山があるらしいです。
それなので、結婚した時「いずみも富山県民なんだから―」って言われて。
最初は「えー、行きたくないー」とか言いながら、嫌々登っていました。
もともとインドア系ですし、私(笑)。

-:ご主人に感謝ですね。

中町:今は私のほうが「行こー行こ―」って積極的です。

新作

-:それでは展示会に向けて何か一言お願いします。

中町:独立時からずっと作っていたものもありますし、新作も色々作りました。
「漢字」シリーズや「壺」シリーズも初登場しますので、よろしくお願いします。

中町いずみインタビュー 中町いずみインタビュー

-:有難うございました。



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